5th
※備考
・A=流行る前の状態,B=一定の認知を得た状態,C=Bの状態へ移行させる時の反応障壁
・「触媒」とは,反応を起こりやすくして,Cの山を下げる効果をもたらすもの
川上氏:
あ,そうだ。今日は,さっきのビジネスのプロセスを考えるのが大切だよねって話から繋げて,僕が良く使っている「エネルギー遷移図」の話でもしましょうか。結構便利なんですよ,これが。
4Gamer:
「エネルギー遷移図」ってどういう意味ですか?
川上氏:
いや,言葉通りの意味ですよ。僕は,大学が工学部だったこともあって,何かを考える時に,化学式や何かしらの科学反応に置き換えて考えることが多いんです。えーっと,少し待ってくださいね……(ホワイトボードにグラフを書き出す)
4Gamer:
これは……,どういう意味ですか?
川上氏:
んーと,これは化学反応を表すグラフが元ネタなんですけど,僕は,このグラフにビジネス/サービスの状態を当てはめて考えることが多いんですよ。縦軸がサービスの維持,あるいはブレイクさせるために必要なエネルギー量を表していて,横軸が時間経過を表しています。
4Gamer:
ふむふむ。
川上氏:
たいていのサービスやビジネスはそうだと思うんですけど,一部の人間だけが使っている「Aという状態」から,沢山の人が利用している「Bという状態」に持って行くためには,相当なエネルギー(コスト/リソース)として「Cという状態」が必要になるわけですよね。
4Gamer:
では,その「Cの部分」というのが,いわゆる課題を乗り越えるために必要なエネルギー量の多さということですか?
川上氏:
そうです。「めちゃくちゃお金がかかる」であったり,「何かキラーコンテンツが必要になる」であったり,とにかく,Bという状態への化学変化を起させるために必要な何か,というイメージですね。
4Gamer:
なるほど。なんとなく「キャズム理論」を連想しましたが,それに近いイメージなんでしょうか。普及率16%の壁(溝),みたいな。
川上氏:
ああ,そんな感じです。僕は,新しいサービスを考える時に,このグラフに当てはめて考えることが多いんですけど,みんなね,このCの部分が低いと「お,俺にも出来そう」って安心しちゃうんだよね。
4Gamer:
ああ……。低コストで参入! みたいな話はたいていそうですよね。
川上氏:
うん。でもそれっておかしな話で,簡単に越えられる山だったら,他の誰だって越えてるんですよ。だから,一見越えられそうだけど手つかずのものがあったら,それはもしかしたら,自分の知らない問題があるのかもしれないし,そもそも山の高さを誤って見積もっているのかもしれない。
4Gamer:
仮に本当に新しい分野で,自分が先んじて乗り出せるとしても,追随する競合他社を警戒しなければならない,と。
川上氏:
そうそう。そういう分野は,得てして数年で凄まじいレッドオーシャンになりますから。そこで勝ち残るのは大変です。僕はそういう市場で勝負したくない(笑)。だから僕は,まずこのCの部分が高い案件(ニーズ/サービス)を探すんです。そして理想でいえば,自分達だけがその高い山を越えられるってものがいいわけですよね。
4Gamer:
理屈で言ったらそうですけど……。
川上氏:
で,そこで重要なのが「触媒」って考え方です。
4Gamer:
触媒?
川上氏:
化学変化を起こすために必要なエネルギー値を下げるもの……つまり,Cの部分の山を下げる効果をもたらすものってことですね。
4Gamer:
ああ。
川上氏:
できるだけ自分達だけが持っている触媒……,技術であったり,人脈であったり。そういうものを考えながら,このグラフに当てはめていくと,考えがとても整理しやすい。
4Gamer:
確かに。これは分かりやすいモデルですね。しかし,触媒,ですか。なるほど……。
川上氏:
自分達が持っている触媒はなんなのか。あるいは,触媒になり得るものをどう培っていくのか。新しいサービスを作って,なおかつそこで主導権を失わずにいられるかどうかは,そこにかかってくるんですよ。
4Gamer:
実は僕がキャズム理論で気に食わなかったのが,この触媒に当たる視点が欠けていたところなんですよ。溝があるのは分かったけれど,じゃあどうするんだよ,みたいな(苦笑)。
川上氏:
頑張って飛び越えろ! みたいね(笑)。
4Gamer:
ええ。飛び越せるんだったら,誰も苦労しない(笑)。